「そろそろ社員も30人を超えたし、専任の人事が欲しい」 「採用も、評価制度も、労務も、全部任せられるプロに来てほしい」そう考えて採用した「期待の星」である一人目人事が、入社後わずか数ヶ月で「ここでは何もできない」と言い残して去っていく……。 これはフィクションではなく、成長企業で日常的に起きている光景です。一人目人事は、組織拡大の要(カナメ)ですが、同時に「最もミスマッチが起きやすいポジション」でもあります。 失敗の原因は、人事担当者の能力不足ではありません。経営者が描く「人事像」と「現実」のズレ(構造的な欠陥)にあります。本記事では、一人目人事で失敗する3つの典型的なパターンと、「幻のスーパー人事」を探すのをやめ、現実的に組織を前に進めるための戦略を解説します。1. 診断:一人目人事が失敗する「3つの典型的パターン」なぜ、高年収で迎え入れた経験者ですら機能しないのか。その原因は以下の3つに集約されます。パターン①:「なんでも屋」の崩壊(業務過多)経営者は人事に以下のすべてを期待しがちです。採用(攻め): スカウトメール送信、面接、エージェント対応労務(守り): 給与計算、入退社手続き、勤怠管理制度設計(仕組み): 評価制度の構築、カルチャー浸透総務(雑務): 備品発注、イベント運営これを一人で完璧にこなせる人間はいません。 特に「採用」は終わりなき総力戦です。採用活動に追われている間に労務ミスが起き、制度設計など考える時間もなく、疲弊して退職します。パターン②:フェーズとスキルのミスマッチ「大手企業で人事経験10年」という肩書きだけで採用していませんか?大手の人事: 整った仕組みを運用するプロ(オペレーションが得意)。一人目人事: 何もない荒野に道を切り拓くプロ(カオス耐性と行動力が必要)。大手のやり方をそのまま持ち込み、「マニュアルがないと動けない」「採用予算がないと無理」と言い出して現場と衝突するケースです。パターン③:経営者との「グリップ」不足「人事は任せた」と言いながら、人事が連れてきた候補者を社長が「感覚」で不採用にし続ける。あるいは、人事が提案した評価制度を「忙しい」と後回しにする。 「権限」を与えずに「責任」だけを押し付けられた人事は、経営者への不信感を募らせ、組織の敵対勢力になってしまいます。2. 解決策:まずは「機能を分解」し、優先順位を決める失敗しないための鉄則は、「スーパーマンを探さない」ことです。 自社の現状において、最も解決すべき課題は何か? 人事機能を分解して考えましょう。優先度A:とにかく人を増やしたいなら「採用特化型」今の課題が「人手不足」なら、労務や制度は一旦置いておき、「リクルーター(採用担当)」を採用すべきです。要件: 営業経験者や、人材エージェント出身者など、数字を追うことに慣れている人。注意点: 彼らに給与計算などの細かい事務をやらせるとモチベーションが下がります。優先度B:組織崩壊を防ぎたいなら「管理・労務型」社員が増えてトラブル(残業代未払い、メンタル不調)が増えているなら、「守りの人事」が必要です。要件: 社労士事務所での勤務経験や、管理部門での実務経験者。注意点: 彼らに「キラキラした採用広報」や「攻めのスカウト」を求めてはいけません。優先度C:組織を強くしたいなら「CHRO候補(HRBP)」経営者の壁打ち相手となり、事業戦略を人事戦略に落とし込むパートナーです。要件: 経営視点を持ち、事業サイドの経験もある人。採用難易度も年収も極めて高いです。3. 2025年の新常識:「一人目」を正社員で雇わない選択「これらを兼ね備えた人が欲しいが、採用できない」 そう悩む経営者に、2025年のトレンドである「第3の選択肢」を提案します。それは、「一人目を正社員で雇わず、機能ごとにアウトソース(外部化)する」という戦略です。戦略①:採用は「RPO(採用代行)」と「副業プロ」へ採用業務(スカウト、日程調整)は、プロセスが明確なため外部化しやすい領域です。 正社員一人分の人件費(年500〜600万円)があれば、優秀なRPO(Recruitment Process Outsourcing)や、大手企業の優秀なリクルーターを副業で雇うことができます。 彼らはノウハウを持っており、即戦力として機能します。戦略②:労務は「社労士」と「オンラインアシスタント」へ専門知識が必要な部分は社労士へ、手続きなどの定型業務はオンラインアシスタントへ。 SaaS(SmartHRなど)を導入すれば、社内に専任者がいなくても回る仕組みは作れます。戦略③:制度設計は「外部コンサル」へ評価制度は一度作れば、しばらくは運用フェーズになります。 立ち上げ期だけ、経験豊富な人事コンサルタントにプロジェクト単位で入ってもらう方が、質が高く、トータルコストも安く済みます。4. それでも「専任」を採用する時の心得(オンボーディング)外部リソースを活用しつつ、やはり社内に「核となる一人目」を採用する場合、経営者がやるべきことは一つです。「期待値の調整(握り)」を最初に行うこと。入社初日に、以下のことを伝えてください。「何をしたら100点か」の定義: (例:半年でエンジニアを3名採用すること。労務は60点でいい)「何をしてはいけないか」の定義: (例:現場のマネージャーを通さずに勝手なヒアリングをすること)定例1on1の実施: 最初の3ヶ月は毎週30分、社長と人事で話す時間を確保し、認識のズレを即座に修正する。人事(Human Resources)は、経営資源そのものを扱う仕事です。社長が「丸投げ」にした瞬間、その採用は失敗に向かいます。5. まとめ:人事は「経営者の影」である「一人目人事」が機能するかどうかは、実は「経営者がどれだけ人事に関心を持っているか」の映し鏡です。失敗する企業は、人事を「面倒な作業を押し付ける先」と考えています。 成功する企業は、人事を「経営目標を達成するための戦略パートナー」と定義し、共に汗をかいています。「いい人がいない」と嘆く前に、まずは「今、自社に必要な人事機能は何か」を分解し、それを正社員で採るべきか、外部プロに頼るべきかを冷静に判断してください。それが、組織崩壊を防ぐ第一歩です。【無料ダウンロード】一人目人事 採用要件定義・役割分担シート「どんな人を採ればいいかわからない」という方のために、自社のフェーズに合わせて求めるスキルを整理できるチェックシートをご用意しました。 正社員に求めること、外部に任せることを可視化できます。[📥 一人目人事 ジョブディスクリプション作成シート(.xlsx) をダウンロードする] (※実際の記事ではここにダウンロードリンクを設置)